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セルティック・ハーフアンシャル体 説明
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概要 及び I,J,L,T,N   O,C,E,A,B
F,H,K,M,P,Q,R,S,U,X

D,G,Z,V,W,Y
数字の書き方&番外編:合字と&について
参考文献

セルティック・ハーフアンシャル体(Celtic half-uncials)の説明です。

セルティック大文字体の1ページ目で少し説明しましたが、
大陸からキリスト教布教と一緒に渡ってきたアンシャル体ハーフアンシャル体が元になっています。

このセルティック・ハーフアンシャル体は主に聖書の文章を書く時に使われました。
タイトルや大項目の頭文字は大文字体にまかせて小項目には頭文字を少し装飾したりもします。

これまで古い時代の書体を説明する際にお話してきたとおり、この書体も
書き方は1種類ではなく、さらに呼び名が複数あります。

”Irish majuscule”(アイリッシュ マジャスキュル)
”Irish Half−uncial”(アイリッシュ ハーフアンシャル)
”Insular majuscule”(インシュラー マジャスキュル)
そして
Celtic Half-uncial”です。
”majuscule”は大文字体と訳します。
”Insular”はラテン語で、英語の”Island”です。

アイルランドの修道院はそれぞれ小さな島に建っていたので
”Irish”や”Insular”が頭につき、ケルトの文化の中で完成された
書体なので”Celtic”ともつきます。

また、大文字体と聞くと私たちはすぐにローマ大文字体が元になっている形を思い浮かべますが、
ローマ大文字体が大文字の代表格として全世界に広まるのは印刷物が身近になった近代以降
と言っても過言でありませんし、現代での感覚に近い使われ方をする大文字は
”Capital letters”と呼ばれます。

ケルト及び中世期は文章を書くための書体として漢字でいう楷書が
”majuscule”(アルファベット全体をみた時に文字の高さがあまり変わらない書体)

行書体にあたる、主に日常の書面や聖書への注釈などに使う書体を
”minuscule”(小文字体)と呼びます。
ということで、訳語にとらわれすぎないほうが理解しやすいです。

また、セルティック・ハーフアンシャルと呼ばれる事があるのは
元来大陸で日常書きや注釈書きに良く使われたハーフアンシャル体を主にお手本
としたからです。
このハーフ・アンシャル体というのがこれまた色んな形があるんです。
当HPでご紹介したのは注釈書きに使いやすいXハイトがとても低いタイプですが、
アンシャル体と殆ど変わらない形もあります。
しかもセミ・アンシャル体(semi-uncial)
とも呼びます。
いかに複雑なヨーロッパの中世史の中で書体が培われてきたか、垣間見るようです。


ともあれケルト人独自に”majuscule”と”minuscule”を発展させ、
逆に大陸へ書体の最新トレンドとして影響を与えた訳ですから
そのパワーに尊敬の念を抱きつつ、ぜひ取り組んで下さい。

引き続き、
”The art of Illuminated Letters"(A PRACTICAL GUIDE FOR CALLIGRAPHERS)
を参考にしていますが、ここでのセルティック・ハーフアンシャルは取り組みやすいように本の中で少し形を
変えています。しかし、ケルトの感じを出すには十分ですし、当HPの初心者の方を中心とした
様々な方にカリグラフィーに親しんでいただく目的に沿っている形です。

アルファベットによっては私の独自の判断でさらにケルトっぽい形をご紹介しています。

できれば先にアンシャル体は書いてみて頂きたいなあ、と思っています。
形は似ていますが、セルティック大文字体に負けずペン先の角度が凄いんで。。。。。

(2004年6月)


Xハイトはペン先4個分、アッセンダー、ディッセンダーはそれぞれペン先1.5個分です。
スピードボールのC-2(3ミリ幅)が練習には適しています。
基本のペン先の角度は15度です。
大文字体は0度が中心だったし、慣れるまで大変です。

この時代文字は聖なるもの、人間中心の書きやすさは重視されていません。
それにアイルランドに元々あったオガム文字は直線構成でした。

ゆっくりゆったりペン運びを楽しんでください。。。


基本練習1

”I”が基本です。必ず最初に書いてみて下さい。

書き順1 ペン先15度でウエストラインの下にあて、角を書きます。
      

書き順2 書き順1に始点を重ね、ベースラインまで垂直に降ろします。
       右に少しだけ張り出し、降ろしてきた垂直線の中に戻ります。

この戻り方は”The art of Illuminated Letters”を参考にした形で、”ケルズの書”の中でも
見られます(下図左側)

しかし、”ケルズの書”や”リンディスファーンの福音書”で多く見られる形は別にあります(下図右側)。


”I”の場合はXハイトの中心近くまで戻れば良いのでそれほど難しくはありませんが、”F”や”M”などは
始点まで完全に戻って次の動きに入るので難しいです。

ということで、左の戻り方に統一してここでは説明します。
 

当HPではハーフアンシャル体よりアンシャル体が今回の書体に近いので、
アンシャル体を勉強された方は並べて”I”を書いてみて下さい。

ペン先の角度の違いと書き順2の終点の違いがよくわかります。
では、”I”に慣れてから取り組むと楽なアルファベットを御紹介します。
”J”です。

書き順1 アッセンダーラインから、”I”書き順1と同じ角を描きます。
      

書き順2 書き順1に始点を重ね、ディッセンダー域まで垂直に降ろし、
       最後に少し左へ曲がります。
”L”です。

書き順1 アッセンダーラインから、”I”書き順1と同じ角を描きます。
      

書き順2 大文字体を思い出して、アッセンダー域からXハイト内で
       ドロップ型の半分を描きます。

※”L”は右にきたアルファベットと連結することが多いので、終点では
 ペン先の右側だけで細い線を出す練習をしておくとベストです。


”T”です。

書き順1 ”L”の書き順2と形は同じですが、アッセンダーの中心ぐらいから
      書き始めます。
      

書き順2 ウエストラインに向かって細い線を出してから左を軸にペン先を寝かせます。
      水平に細い線を出し書いてから右を軸にペン先を下に動かします
”N”です。

書き順1・2 ”I”と同様。
      

書き順3 ”I”の書き順1と同様。

書き順4 途中まで”I”の書き順2と同じですが、最後は戻らずに右へ短く流します。

書き順5 Xハイトの中心からベースラインまで緩やか、かつ少しずつ細く書き順2と4を繋ぎます

     ※この書体は左詰で書きますが、他の行の右端と合わせるため、この”N”をもの凄く
        横長に書く事があります。
        上記の通り左右の位置を先に決めてしまう事で横幅の調整がしやすくなります。

基本練習2

”o”も大切な形です。


書き順1 左の半円を描きます。

書き順2 書き順1の始点から終点に向かって右の半円を描きます。

アンシャル体と非常によく似ていますが、ペン先の角度がさらに寝ていますから、アンシャル体より
少し縦長に描き、全体のまとまりを出します。

”I”同様、アンシャル体と並べて書いてみると違いがわかりやすいです。
”O”に描き慣れたら、下のアルファベットはだいぶ楽に書けます。
”O”を含めたこのグループは”L”同様、右にくるアルファベットと連結することが多いです。
”C”です。


書き順1 ”O”の書き順1と同様。

書き順2 書き順1の始点から頭を書きます(短めに)。
”E”です。


書き順1 ”O”の書き順1と同様。

書き順2 書き順1の始点から頭を書きます(特に短めに。始点からすぐ下に向かう)。

書き順3 Xハイトの中心ぐらいから右上に線を引きます。
      ※ まっすぐではなく、ゆるやかにカーブします。
”A”です。


書き順1 ”O”の書き順1と同様ですが、もう少し上まで持ち上げてとめます。

書き順2 ”C”の書き順2と近いですが、終点はしっかりとめます。

書き順3 始点と終点をしっかりカーブして書き順2・1の終点をなぞります。
       ※Xハイト内を降りる時は垂直に!
”B”です。

書き順1
・2 ”L”と同様。

書き順3 ”O”の書き順2と同様。